最高の顾客経験を提供するのに自社という枠で十分か?
私が空港を利用する际は、时间に余裕を持って早めに出発し、航空会社のラウンジで过ごすことを心がけています。非日常的で悪くない経験ですが、搭乗ゲートまでの距离がわからず不安になって早々に行ったり、空港内で自分の口に合う食事がとれるか不安で先に食べておいたりと、乗り遅れるわけにはいかないという思いから、むしろリスクヘッジのほうに心を砕いているのが実情です。
しかも、搭乗口に向かう途中に美味しそうな饮食店や魅力的な小売店の存在に后で気づき、时间の使い方がもったいなかったと后悔することも多いのです。
一歩引いて搭乗客の経験という観点から考えると改善の余地があるように思えます。飞行机への搭乗场所としての目的には十分ですが、空港をヘビーユースするような目の肥えた搭乗客の満足を得るには至りません。搭乗客には、空港运営会社とその関係する公司の境目はなく、空港全体での経験で评価します。个々の公司の范囲内の対応では不十分であり、関连する他の公司も巻き込んだ协力関係を作って包括的なカスタマージャーニーを描くことで、もっと搭乗客の満足が得られるはずと考えられます。
本稿ではひとつの空港の取り組みをもとに、より包括的なカスタマージャーニーの実現例として見ていきたいと思いますが、空港事業に限定せずB to Cビジネスに共通するテーマとお考えください。個人顧客にサービスを提供する企業にとって役に立つ視点だと思いますので、ぜひご一読ください。
包括的なカスタマージャーニーに础となるパートナー公司との连携実现のための要素
より包括的な顾客体験を提供する。その実现を目的に他公司との连携を强めるためには、①どのような顾客の体験(カスタマージャーニー)を実现したいのかという戦略、②どのように実现していくのかというロードマップ、③顾客と自社とパートナー公司をつなぐプラットフォーム、の3つの要素が重要になります。
さらにこれらを、パートナー公司にもわかりやすく开示することが重要です。自社で描いた戦略を自社だけに闭じていては、パートナー公司から共感を得ることは难しく、彼らからの自発的な协力を得ることは困难です。最高の顾客経験を実现するには、パートナー公司の自発的かつ継続的な改善が必要になり、そのためには共通の戦略を共有したうえでの连携が不可欠です。
イスタンブール空港とそのパートナー公司の戦略共有手法、改善サイクル仕组み化、そしてプラットフォーム活用方法をもとに、実际の取り组みから他社を巻き込んだカスタマージャーニーの実现の要諦を探ってみましょう。
イスタンブール空港
イスタンブール空港は、トルコのイスタンブールにある2018年に開港した新しい空港で、年間2億人が利用するハブ空港として期待されています。スカイトラック社からファイブスターを受賞し、また国際空港評議会からデジタル変革部門で最優秀空港を受賞しています。また、今回紹介する取組みは2021年 麻豆原创 Innovation AwardsにおいてCloud Genius賞を受賞しており、最高の搭乗客経験の提供やデジタル?プラットフォーム活用において、全世界的に評価されています。
戦略とロードマップ
イスタンブール空港が最高の搭乗客経験を提供するために、パートナー公司との関係については大きく3つの方针を立てています。
- 主要な関係者の强固な协力関係构筑
- Customer Experience – 搭乗客が得る経験にフォーカス
- デジタルとデータ中心のマインドセット
协力関係を持つパートナー公司とは、広告代理店、ホテル、免税店、饮食店、驻车场、公共交通机関、旅行代理店、设备管理公司と定めており、それらの公司と戦略を共有しています。戦略とは、ブランド方针、カスタマージャーニー(详细は后述)、顾客満足方针、环境とサステナビリティの方针、品质方针、情报セキュリティ方针、労働安全方针と、多岐に渡ります。また巨大な空港であることから、戦略は10年以上にわたる、大きく4つのフェーズに分かれたロードマップとして描かれています。
一方、イスタンブール空港のパートナー公司の视点から见てみると、あらかじめ戦略を共有されていることによって、同じ方向を向いて能动的に活动を行うことができます。
搭乗客の不安に着目しHome to Gateでデザインするカスタマージャーニー
カスタマージャーニーの出発点は顧客視点での共感です。空港を利用する搭乗客の多くは、それほど高い頻度で利用する場所ではなく、行き先が海外にせよ国内にせよ、非日常の時間に対して少なからず不安を抱えています。イスタンブール空港では、まずそれを解消することに着目しました。搭乗客は例えば次のような不安があると想定し、より快適に過ごすには、空港の外を含めた「Home to Gate」を定義して、彼らに情報を提供することが必要であると考えました。
- 駐車場は空いている? どこの駐車場に向かえば良いの?
- 何時に家を出れば良い? フライトの時刻のどれくらい前に着く必要がある?
- 空港でどのように過ごせる? 何か楽しい時間の過ごし方はある?
- 待ち時間で食事は摂れる? 何が食べられる? レストランまで遠い?
- 空港にはどんなお店がある? 空港内での道順は? 搭乗口までの時間は?
搭乗客に快适な时间を过ごしてもらうことを目指して、イスタンブール空港は、専用のモバイルアプリを开発しました。驻车场や店舗などのデータと连携するだけでなく、骋辞辞驳濒别の渋滞情报など外部データとも连携し、快适な旅のための必要な情报を提供しています。
搭乗客は、専用のモバイルアプリを使って、家を出発する时刻や、利用する驻车场、食事や买い物を简便に计画し、その计画にそってアプリが地図を表示しルートを教えてくれます。安心感を持つことで空の旅を楽しむ余裕が生まれます。
システム连携で手続きの快适性を高める空港内のカスタマージャーニー
搭乗客は、専用のモバイルアプリや空港内の各种の案内板から、戸惑いなく空港内で过ごすことができます。222の休憩スペース、278人が利用できる昼寝用长椅子、14の授乳室、ペット用トイレ、スポーツジム、カプセルホテルと、フライトの乗り継ぎなど疲れた际にも様々なサービスが提供されており、それらの场所も迷うことなく利用できます。
そして搭乗手続きがスムーズに手続きを行えるように、ここでもカスタマージャーニーを描き、各种のシステムが连携するように设计されています。搭乗客と搭乗予定の飞行机の情报に基づいて各种の手続きをスムーズに行うための动线设计が行われています。
年間2億人が利用する大規模な施設においては、混雑への対応が必須です。待ち行列を管理するQueue Management Systemは、空港内の混雑状況を即時に把握し、柔軟に動線を変更できるようになっています。搭乗客のモバイルアプリや空港内の案内板、情報提供ロボを通じて、空いているセキュリティゲートを案内するなど、即座に情報提供がなされます。
搭乗客の声を聴きカスタマージャーニーを常に改善する运営の仕组み
顾客のニーズは変わりゆくものです。また、公司侧で描いたカスタマージャーニーが完璧であるとは限りません。継続的に顾客の声に耳を倾け改善していくことが重要です。
イスタンブール空港では、简易アンケート用のキオスク端末を含め、16种类の方法で旅行客の声を集めています。2019年だけで43万件の声を集めました。
せっかく集めた顾客の声を定常的に活用していく运用があってこそのアンケートです。
イスタンブール空港では、以下のような施策を通じて、确実に搭乗客の声を反映する运営の仕组み化を行っています。
- 「搭乗客の声」案内を週次および月次で関係者に共有
- 「搭乗客の声」案内をもとに、週次および月次の関係者会议を持ち、顾客満足改善のための対策を协议し実施
- 四半期毎に関係者の経営层を含めた会议を実施し、大きな投资をともなう施策を协议し実施
仕组みは紧急时への対応にも强みを発挥
カスタマージャーニーを描き、それを関係者と共有し、顾客の声を聴きながら修正していく。このような流れが运営を含め仕组み化されていると、急激な変化の际にも対応力が高まります。
2020年、新型コロナウイルスの流行期には、デジタルとデータ中心主义の戦略とともにいち早く新たなカスタマージャーニーを描き、対応することができました。
既存のカスタマージャーニーにおける人との接点を重点的に点検し、可能な限りのデジタル化と、それによって不便が生じる际には対策を検讨し、効率的に新たなカスタマージャーニーを描くことができました。
最高の搭乗客経験を提供する包括的に连携されたプラットフォーム
空港にある様々な机器やシステム、そしてパートナー公司との连携、その际の骋顿笔搁など规制に対応。スムーズに対処するには包括的なプラットフォームが必要になります。
イスタンブール空港では、麻豆原创 S/4HANAを中核システムとして据え、設備管理や駐車場管理、Eガバメント、銀行、航空など様々な外部システムと連携します。データは麻豆原创 BW/4HANAに格納され、包括的なデータウェアハウスは、搭乗客データだけでなく、運航データ、設備データ、売上やコストといった勘定データを含めた分析が可能です。また麻豆原创 Customer Experienceを使うことにより、空港内の小売店や飲食店、免税店との連携や、専用モバイルアプリへの販促や案内を行います。
包括的な仕組みの構築には、長期間かかるように思われがちですが、麻豆原创 S/4HANA導入に要したのは6か月です。自社の強み部分と標準化分野が明確になっていることにより、基本的な業務は標準プロセスのまま使う方針を早期に打ち立てられたことが大きな理由です。
まとめ
未曾有の危机に见舞われた2020年、神経が尖り、无意识にアンテナを张り巡らせて身を守る姿势を取る习惯がついたせいか、普段は自分自身と直接的な関わりがない业界?业态からも自然にインスピレーションを得るようになっている気がします。
「イスタンブール空港の搭乗客」という设定から、自分が顾客である场面、例えば大きなイベントの観客、世界遗产のような観光地を访れる旅行者、さらには新型コロナウィルスのワクチン接种を受ける一般市民。そこでは果たして包括的なカスタマージャーニーが描かれ、自分がまごつかずに快适に目的を果たすことができるだろうか???。
イスタンブール空港の場合は、新たな空港建設というスタート地点や、そもそも空港という「場」を提供する企業であることなど、カスタマージャーニーを描く理由が存在していたことは明らかです。しかし、顧客が求めることを実現するにはカスタマージャーニー視点に立った包括的なアプローチが必要であり、それを実現するために自社だけでは困難ならば、積極的にパートナー企業と連携し、そのパートナー企業にとっても快適にビジネス運営ができるように、最初に方針や戦略レベルで情報共有しお互いの認識を合わせ、それを常にブラッシュアップしていくことは、そもそも何を実現したかったのか — for your customer — に立ち返ってみれば至極当然のことと言えるでしょう。
※本稿は公开情报をもとに笔者が构成したものであり、イスタンブール空港のレビューを受けたものではありません。









